7番 せまい部屋に雨が降る

by 鹿野洋平

「多様な生命の躍動」ということで、普段生活の中で意識されない人間の視覚をテーマに、個々人によって異なる眼球運動の多様性を表現しました。 暗い展示空間に複数の眼球が映ったモニターが置かれている。それらに向かい合うように、より大きなモニターが1つ置かれている。大きなモニターの中には、雨の日の部屋の様子が映し出され、その部屋の様子は各々の眼球の表面にも映り込む。プログラミングによって映像/音響/光をコントロールして展開していく、メディア・インスタレーション作品である。 人間の視覚は、写真や映像とは違い固定された長方形の枠組みがなく、また、個人によって視線の流動性や反応速度・瞬きのタイミングなどが異なる。よって、視覚とは非常にプライベートで生理的なものであり、他者と共有出来るものではない。複数人のあいだで、同一の空間内において同一の対象を見ていたとしても、完全に同一なイメージを見ることはお互いに出来ないのである。 本作では、そのような極私的な視覚というものを、各々の眼球の映り込みをとらえることによって暴こうとする。ただ、そこでは、個人が対象を認知し理解する以前の生理的な反応(動きや瞬き)を捉えることしか出来ない。しかし、本作の鑑賞者は、対象(=電気スタンドが点灯する部屋) を直接見ずに、それを知覚している個々人の生理と生理のあいだを読み取っていく。その行為は、鑑賞者自身の視覚も十全で固定された対象への知覚なのではなく、絶え間ない眼の運動の中でイメージの断片と断片を繋ぎ合わせながら対象を知覚している、ということをメタ的に示していると言えるのではないだろうか。 また、雷の強い光によって各々の眼球の瞳孔が開くと、映り込みは光に負けて消えてしまい、鑑賞者は対象(=電気スタンドが点灯する部屋)を見失ってしまう。さらに、本作を鑑賞する上で、無意識に自分も瞬きをしてしまうことも考慮出来る。「見る」という行為は、輪郭が曖昧で、生理的な現象と切り離すことは出来ないのである。

  • コンセプト
  • コンペティション
  • アイデア
  • 5
  • 0

コメントの投稿は会員のみとなります。

会員登録はこちら